「登録販売者試験に、ついに合格!やった!」
そんな喜びも束の間、次にあなたの前に立ちはだかるのが、「実務経験」という、少し複雑なルールです。
「合格したけど、名札に『研修中』って書かないといけないの?」 「一人前の登録販売者になるには、実務経験が必要って聞いたけど…」 「よく聞く『1920時間』って、一体どのくらいの期間なの?」
合格後のキャリアを考える上で、この「実務経験」のルールを正しく理解することは、避けては通れない非常に重要なステップです。
ご安心ください。この記事では、そんなあなたの疑問を解消するため、複雑な実務経験のルール、一人前の登録販売者になるための「管理者要件」、そして「実務経験証明書」の取得方法まで、必要な情報を全てまとめました。
この記事を読めば、あなたが次に何をすべきかが明確になり、自信を持ってキャリアの第一歩を踏み出せるようになります。
大前提:受験に「実務経験」は不要!合格後の話です
まず、多くの初学者が混同しがちな重要ポイントから解説します。 現在の登録販売者試験は、受験するために実務経験は一切不要です。
2015年のルール緩和がターニングポイント
かつては、受験資格として「1年以上の実務経験」または「薬学に関する専門課程の修了」が必須でした。しかし、2015年度にこの要件が撤廃されたことで、未経験の方でも誰でも挑戦できる、門戸の広い資格となった経緯があります。
「合格者」と「一人前の登録販売者(管理者)」は違う
試験に合格した時点でのあなたは、まだ「登録販売者(研修中)」という身分です。そのため、ドラッグストアなどで働く際は、名札に「研修中」と明記し、薬剤師や管理者要件を満たした登録販売者の管理・指導のもとでしか医薬品を販売できません。
この「研修中」を外し、単独で店舗の管理者になれる「一人前の登録販売者」になるために、実務経験が必要になるのです。
登録販売者の「管理者要件」とは?1920時間の壁を理解する

一人前の登録販売者になるための条件、それが「管理者要件」です。この要件を満たすためのルールは少し複雑ですが、基本をしっかり押さえましょう。
原則ルール:「直近5年中、2年以上」かつ「通算1920時間以上」
これが最も基本となるルールです。具体的には、
- 過去5年間のうちに、
- 合計で2年以上(24ヶ月以上)の実務経験があり、
- かつ、その合計勤務時間が1920時間以上
である必要があります。 例えば、フルタイム(月160時間勤務)であれば1年で1920時間を超えますが、「2年以上」という期間の条件も満たす必要があるため、最短でも2年かかります。
パートタイマー(月80時間勤務)であれば、ちょうど2年間(24ヶ月)で「1920時間」と「2年以上」の両方の条件を満たす計算になります。
2023年4月からのルール緩和・追加要件とは?
近年、人手不足などを背景に、この管理者要件が一部緩和されました。それが以下の要件です。
- 過去5年間のうちに、
- 合計で1年以上(12ヶ月以上)の実務経験があり、
- かつ、その合計勤務時間が1920時間以上
- さらに、指定された「継続的研修」および「追加的研修」を修了している
つまり、1年あたりの勤務時間を長くして集中的に働くことで、最短1年で管理者要件を満たす道も開かれたのです。
ただし、追加の研修受講が必須となる点に注意が必要です。
ブランクがあっても大丈夫?「通算」の考え方
「1年間働いて、2年間休んで、また1年働いた」というように、途中にブランク期間があっても問題ありません。
実務経験は「通算(合計)」で計算されます。 ただし、全ての勤務期間が「直近5年間のうち」に含まれている必要があります。
あまりに長いブランクがあると、過去の経験がカウントされなくなる可能性があるので注意しましょう。
「実務経験」として認められる業務・認められない業務

「自分の仕事は実務経験としてカウントされるの?」という疑問も多いです。原則として、「一般用医薬品の販売に関する業務」が対象となります。
認められる業務の例
- 医薬品に関する相談応需、情報提供
- 医薬品の陳列、在庫管理、発注業務
- 店舗の管理者として、他の従業員を監督すること
認められない業務の例
- レジ打ち業務のみ(医薬品の相談対応をしていない場合)
- 日用品や食品の品出し、管理業務のみ
- 調剤薬局での調剤補助業務
- 化粧品のカウンセリング販売のみ
簡単に言うと、「医薬品コーナーの担当として、専門的な業務にどれだけ関わっていたか」が重要になります。
「実務経験証明書」はどこでもらえる?どう書くの?

管理者要件を満たしたことを証明するのが「実務経験証明書(または業務従事証明書)」です。
証明書の発行元は「勤務先の企業」
この証明書は、都道府県ではなく、あなたが現在または過去に勤務していたドラッグストアなどの企業に発行を依頼します。通常は、本社の人事部や総務部が担当窓口となります。
証明書の書き方のポイントと注意点
フォーマットは、各都道府県のホームページなどからダウンロードできます。業務内容や勤務期間、合計時間などを正確に記入し、必ず会社の代表印(社印)を押してもらう必要があります。
退職する際に、あらかじめ発行を依頼しておくとスムーズです。
転職を繰り返している場合はどうする?
複数のドラッグストアでの勤務経験を合算して要件を満たす場合は、勤務した全ての企業から、それぞれ証明書を発行してもらう必要があります。
少し手間がかかりますが、辞めた会社であっても発行義務がありますので、丁寧にお願いしましょう。
まとめ:焦らず、着実にステップアップして「一人前」を目指そう
登録販売者の実務経験について、ご理解いただけたでしょうか。
- まず、受験に実務経験は不要。 誰でも挑戦できる。
- 合格後、「研修中」としてキャリアがスタートする。
- 「直近5年で2年以上、かつ1920時間以上」などの管理者要件を満たすことで、「研修中」が外れ、一人前の登録販売者になれる。
- その証明として、勤務先の企業から「実務経験証明書」を発行してもらう必要がある。
ルールは少し複雑ですが、一つひとつ着実にクリアしていけば、必ず道は拓けます。焦らず、日々の業務と向き合いながら、専門家としてステップアップしていきましょう。
これから実務経験を積むための職場を探す方は、こちらの『仕事内容の徹底解説記事』で、自分に合った働き方を見つけてみてください。 →登録販売者の仕事内容を徹底解説!きついって本当?給料やドラッグストア以外の就職先も紹介